II

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「先日は情熱的な一夜をありがとう。今度また気が向いたら一緒に過ごそう」 (そのセリフもう30人は聞きましたけどぉおお! ビッ……ビオラお嬢様ストライクゾーン広すぎぃいい!)  パーティーが始まってから、私はひっきりなしに男性に声をかけられている。それも私よりも年下から2周り年上までよりどりみどりだ。  会場に入るエスコートはビオラお嬢様のお兄様がしてくれたけれど、彼はビオラお嬢様のことを心底軽蔑しているので、私は早々にひとりぼっちになってしまった。 (まぁ、いつものビッ……ビオラお嬢様であれば顔の良い男性から順に声を掛けていたのでしょうけれど)  ビオラお嬢様の欲望への忠実度は凄まじい。好みの男であれば、婚約者が居ようが危ない男であろうがおかまいなしに声を掛けていくのだ。  結果、今お嬢様のニセモノである私がとても困ったことになっている。 「ビオちゃん、今日はどうした? いつもなら一番に俺のところに来てくれるのに」 (誰だオメー)  私を壁際に追いやってKABEDONするのは、なんかチャラそうな金髪の男。気取った香りの香水とカチカチのヘアワックスはなんとかならなかったのだろうか。 「俺との𝕊𝕖𝕩𝕪な時間のコト、忘れちゃった?」 (んっヒィ! 鳥肌立った!)  彼は私の胸元に掛けているボレロに手を掛けようとする――その手を止めたのは、お嬢様の婚約者だった。 「ビオラ! ここにいたのか。遅れてすまない」
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