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妹(ルダス)視点
また落ちた。ちょろ。
お堅いお姉様の男を、落とすのは簡単。
これでまた、お姉様の悔しがる顔が見られる。
幼い頃から人を見下して、偉そうだったからね。
全部、奪い取ってあげるの。
こ難しい本なんか、ビリビリにしてやったわ。
「ルダス。レジネスとの結婚式が決まったぞ」
「お父様!? あまりに早くございません?」
「レジネスの強い希望と、王家からも即されてな」
「なぜ王家?」
「女に相続権がない以上、ワシに何かあったらと家を心配されてな」
「いや」
だって私は、奪うまでが楽しいの。
自分の物になっちゃうと、興味なくなっちゃうの。
「こらこら。ルダスのためでも、王家の命(めい)には逆らえんよ」
でも。いっか。家までお姉様から奪っちゃったわ。
私、凄くない?
───── 結婚式後(妹ルダス視点) ─────
「どうしてお姉様が王族席にいたのッ!?」
「王太子殿下と婚約したから」
「へ!?」
「ルダスが公爵家を継ぐなら、私は家を出ないと」
「はあぁぁ!? ずるいわッ!」
なにそれ。私がお姉様の幸せを、後押ししたってこと?
悔しいぃぃ─────ッ!!
王太子と結婚したら、ゆくゆくは王妃じゃない!
女の頂点だわ。
しかも王太子は、凄くかっこいい。
私も王太子が欲しいッ!!
「ルダス。落ち着いて。身体が弱いと王太子妃にはなれない。なにより、レジネスを愛してるのでしょう?」
「もう飽きた」
「大人になりなさい。今も。周りの目と耳を意識して行動しなさい。公爵家を背負う顔となるのですから」
うざいでしょ? 相変わらず上から。
あ。王太子が来た。ファサ。私は倒れる。
もう反射よ。だれより、儚げに優雅に倒れるわ。
十年やってるからねッ!
「ずるい? 未来の王妃に、妹君を選ぶはずないだろう?」
あらやだ。王太子は助け起こさない。
紳士としてどうなの? ちらっと目を開ける。
「今まで結婚しなかったのは、断られ続けても、諦めきれなかったから。愛してるんだ。フィリア。必ず幸せにする」
キモッ! なに、人の結婚式で、愛を語ってんの。
でもま、ここから奪うのが私よッ!
私の美貌と、艶めかしい魅力に、男は抗えないのよッ!!
見ててね!
「殿下ぁ──ん」
「被害者ぶるな。フィリアこそ被害者だ。ああでも。フィリアを解放してくれてありがとう」
王太子殿下はお姉様を連れて、さっさと去ってしまった。
は? はいぃ─────ッ!?
ちょっと。そこのアンタ! 助けなさいよ! 花嫁よッ!!
許さない。
お姉様の方が、いい男を捕まえるなんてッ!
お城に住めるなんてぇ───ッ!
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