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十年後 妹(ルダス)視点
「レジネス。出ていけ」
「公爵様? 私はなにもしてませんが?」
「十年も何もしなかったから、追放するんだ」
「追放ですって!?」
「身分も相続権もないぞ。おまえはワシを舐め過ぎた」
「ですが私はルダスの夫です」
「ルダスも連れていけ。これ以上、公爵家を貶められてはかなわん」
「お父様ぁ! 酷いわッ!!」
「触るな。汚らしい。自分が世間で何と呼ばれてるのか知らんのか?」
「なんです?」
「椿姫だよ。つまり娼婦だ」
「レジネスの浮気の仕返しですッ! 悪いのはレジネスですッ!」
「どっちが先でもどうでもいい。国内で見かけたら命はないと思え」
「なんて酷いのぉ─────ッ!!」
でも、泣き叫んでも無駄で。
お父様は、レジネスと私を馬車に乗せた。
「レジネスの兄弟を頼りましょう!」
「ああ。そうだな」
「『散々伯爵家を見下した奴の顔なんて見たくない』と伝えろと」
門前払いだった。
それでも最初はましだった。
ドレスがお金になって、宿に泊まれたから。
売る物が無くなると、レジネスは逃げた。
だから私は、本当に娼婦になった。
男を落とすのは得意!
どんどん登り詰めて高級娼婦に。
顔と身体さえあれば、人生は何とでもなるのよ。
ふふん。甘くみないで。
「夫と何したの!?」
「私にはまる方が悪いでしょ。文句は私ではなく自分の夫にどうぞ」
「は?」
「簡単に落ちて、つまらなかったわ」
シャッ! 突然家に来た女は、包丁を振り回す!
「痛ぁ──いッ!! ちょっと、人の顔に何すんのよッ!」
「こっちは人生かけて結婚してんの! 遊びじゃないの!」
そう言い残して、だれかもわかんない女は去った。
夫がだれかも、わかんない。
キラキラした、母国の王と王妃の行列が通る。
馬車からお姉様は、通りの大歓声に、微笑み手を振る。
目があった気がした。
やっぱりお姉様は、微笑み手を振るだけ。
馬車も王も立派。
どうして私は、立派な人に愛されないんだろう。
ああ。やっぱりお姉様はずるい───
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