あたしは偽る

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なんと、梨花があたしの曲を勝手に自分の曲として、ピアノで隼人くんに聴かせていたのだ。 隼人君は、梨花を天才だと褒め称えた。 「梨花ちゃんの曲、大好き!切なくて、美し過ぎて凄い!こういう曲に俺は出会いたかった。歌いたい!絶対にこの曲、魂込めて歌いたい!」 その言葉を受け取るのはあたしのはずだよね。 あたしは梨花と隼人君の間に入り、あたしの曲なんだけどと説明した。 けど、梨花はわたしの最高傑作だよ。羨ましいからって、自分の曲呼ばわりしないでと笑った。 隼人君も梨花のことを疑っていない。 何を言っても無駄だった。  あたしの曲なのに。 隼人君は歌うのが好きで、将来はロックバンドのボーカリストになりたいんだって、言ってた。 いつも放課後、誰も居ない教室で一生懸命、歌の練習をしている姿に惹かれた。 だから、あたしの作った歌で隼人君を応援して、支えたかった。 梨花の曲で歌いたいって目を輝かせて、あたしに言ってきた時は、この世の終わりがやってきたみたいに思えた。 2人が付き合い出したのも、あたしの曲がきっかけだった。 大切な歌も好きな人も取られた。 梨花に問い詰めると、悪びれる様子もなく あたしに言った。 「隼人君は真鈴にはもったいないよ。それにあたしが負けず嫌いだって分かってるよね?真鈴になーんにも渡さない。全部全部、あたしのもの。あたしがいつだって1番だからね」 いつも優しかった梨花からは想像できないくらいの悪意に満ちた笑みだった。 女神みたいな梨花の欲深い一面。 更にあたしを奈落へ突き落とす言葉。 「あたし、ずっと真鈴が羨ましかった。隼人君の近くに居るのも、曲が作れるのも。真鈴なんかがあたしより上に行くなんて許せない。だから、真鈴のものはあたしのもの!」 梨花の心の闇が見えたような気がした。 あたしよりも自分が何より1番だって思っていたなんて。 決して忘れられない。 あの瞬間があたしの心を蝕んでいく。 そんな、思い出しただけで胸がジリジリと痛むような過去。
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