あたしは偽る

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あたしは偽る

あたしはずっとお姉ちゃんには(かな)わない。 だって、お姉ちゃんはあたしの求めてるものを全て持っているから。 双子で生まれたあたし、真鈴(まりん)は、いつも姉の梨花(りんか)と比べられていた。 いつだって梨花の存在は光り輝いていて、あたしは梨花の影のように暗い存在なんだ。 勉強も運動も容姿もあたしより秀でてる。 何を頑張っても、梨花より上にはいけない。 それがいつも(くや)しかった。 でも、あたしには梨花に勝る部分がひとつだけある。 それは歌。 子供の頃から、歌を歌うのが大好きだった。音楽の先生に褒められたこともあったし、人前で歌うのも得意。 歌はあたしにとって自分を表現できる唯一の方法。 梨花は歌よりもピアノが得意で、仲が良かった頃は、梨花のピアノに合わせて歌ったりもした。 だけど。 あたしの大切なものを梨花は奪っていった。 あたしは中学2年生からギターを始めた。作詞作曲をするようになり、五線譜に歌を綴っていた。 そう、梨花に唯一勝てるのは、音楽だった。 作った曲を大好きな人、隼人(はやと)君に聴かせようとしていた。 その曲は自分にとって今までにない最高の歌。 そして、その曲で告白しようと心に決めていた。 告白することを知った梨花が言っていた言葉。 「いいなあ。隼人君。わたしも好き。歌上手いしイケメンだよね。」 梨花も隼人君を好きなら、ライバルだねとあたしは笑っていた。 梨花もあたしに笑いかけた。その微笑みは柔らかかった。 「そうだね、真鈴に絶対負けないようにしないと……絶対に」 そう、あたしは梨花が本気で隼人君を好きだと思っていなかったから、笑えたんだ。 だから信じられなかった。 梨花があたしの大切なものを奪うなんて。
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