01.FAKE STAR

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「おい、逃がすなよ!」 「離してよ!」 ホストと少女が揉めている。 売掛を廃止にした処で、立替と名を変えて存続している。 そもそも罰則がない自主ルールは絵に描いた餅だ。 マジで喰えねえ餅だ、とアキラは思った。 「赦してやれよ。未成年を入店させる方が悪いんじゃないのか?」 「関係ない奴は黙ってろよ!」 アキラは路上にポイ捨てされた瓶をアスファルトで割り、ホストに向けた。 安物ワインはボトルも弱い。 助けたのは、気紛れか。 少女の格好が、バンギャだったからかも知れない。 「(商売道具)に傷がつくぞ。俺アル中で手許がブレるからな」 「分かった。よせよ」 ホストは少女を置いて逃げていった。 「ありがとうございます。あ……アキラさんですよね?」 彼は返事の代わりに短い溜息をついた。 ファンではなく、マコトの動画で知ったんだろう。 「マコトの……」 ほらな。
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