寄せて集めて演技して

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「皆さん、演劇に興味はありませんか?」  放課後の学習室に呼ばれた俺は、女の先生からそう聞かれた。えっと、確か一年の英語の先生だったはずだ。  その先生が皆さんと言ったのは、俺の他にも学習室に呼ばれた生徒がいるからだ。一人は俺と同じ二年B組の望月 虹凪(もちづき にな)さん。背は低いが元気が良く、彼女の周りはいつもキラキラして見える。 「それって、私たちが何かの役になって演技するってことですか?」  望月さんは小さく手を上げ先生に聞く。9月から衣替え習慣が始まったものの、望月さんはまだ夏用の制服を着用していた。 「はい。ぜひ皆さんには、10月にある高校演劇コンクールに出場していただきたいのです」  先生が答え、望月さんは嬉しそうに声を上げる。 「楽しそう! やりたいです!」  顎くらいまで伸びた髪が揺れ、望月さんはそっと耳に掛けた。 「えっと、なんで私に声がかかったんですが?」  そう聞くのは、二年C組の星宮 瑞季(ほしみや みずき)さん。一度も話したことはないが、昼の放送でアナウンスをしているため知っていた。望月さんとは対照的で、胸元まで伸びた長い髪と凛とした表情が特徴的な人だ。ちなみに彼女は冬用の制服に変わっているものの、まだ暑いのかブレザーは椅子に掛けられている。 「とても聞きやすい声だと思ったからです。あなたの放送は、聞いていて心地良いです」  先生はそう言い、彼女に微笑んだ。 「ありがとうございます。ですが優美先生、この話は持ち帰ってもいいですか?」  そうだ、優美先生だ。そういえばこの先生、放送委員会の顧問だった気がする。 「構いません。人前に立つのは抵抗ありますか?」  優美先生の質問に星宮さんは首を振る。 「いえ、興味はあります。ですが私、趣味でギターをしているんです。その時間が削られるのはちょっと……」  星宮さんは申し訳なさそうに優美先生を見る。 「素敵な趣味ですね。分かりました、ゆっくり考えてください」 「ありがとうございます。あと、今日親が迎えに来るんです。そろそろ来る時間だと思うので」 「そうなんですね。お気をつけて」  星宮さんは、ぺこりと頭をさげ学習室を出て行った。  
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