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「あんな簡単なおつかいも出来なかったんですか? 颯くん」
言いながら、目の前のムカつくほど端正な顔をした十も歳上の恋人は、ソファの上で俺の脚を無様なほど大きく開いて下肢を弄ってきやがる。
「やめ……ろっ、触んなっ」
「こんなにだらしなく僕の指を濡らしておいて? 颯くんはもう少し素直になる必要があるって言っていますよね? いつも。もう達きそうなくせに瘦せ我慢?」
確かに俺の脈打つ熱はもう半達き状態で、愉悦の涙をしとどに流しながら、コイツの指の中で健気にもふるふると痙攣を繰り返している。
「うっせぇ! 誰が達く――っ、めろ、やめろって……っ、く!」
反抗の言葉と同時、昂る雄の充血の先端にやや爪を喰い込ませるように抉られれば、感情の統制すら出来ないまま低く呻いて腹に精を放ってしまい、羞恥と悔しさに唇を噛む。
「由貴……テメェ、いい加減にしろよ?」
思い切り睨みつけてやると眼前の美しい双眸はとても十も歳上とは思えない(つーか、二十代だろ、絶対!)三十六歳にしては些か若すぎて大人げない笑みを浮かべて。
「颯くんが、あんな簡単なおつかいも出来ないからでしょう? それにここ……もう疼いてません? 僕が欲しいって」
俺の吐き出した白濁した残滓を見せつけるように指に纏わせながら、大きく開かれた脚の更に奥にある、自分ですら見たことがない窄みに指を挿入られれば。
「もっ、……やめろって……っく……」
奥まった秘処で快感を刻めることを植え付けられ、他人の手管で快くなることを知っている身体は、もっと指が欲しいのだと意思に反して勝手に腰が揺蕩う。
「颯くんの『やめろ』はもっとして? ですよね?」
ムカつくけど当たりなのが更にムカつく。
俺は恋人のコイツ――一華 由貴――に素直になれないのが目下の悩みだったりしていて、本当はもっと正直に求めたいのに訳のわからないプライドみたいなもんが邪魔をして。
「クッソ、も……うだうだ喋ってねぇで来いよ?」
「まだ指一本しか挿れてませんけど? 苦しいよ?」
腹が立つから思い切りネクタイを引っ張って身体を引き寄せてやると、焚きつけるように膝頭を由貴の(十分すぎるほど反り返っていやがる)下腹にぐりぐりと押し付ける。
「うっせ」
また多淫な瞳を眇めて俺を見下ろしてくるコイツを出来る限りキッと睨んでやれば、由貴は「痛くても知りませんからね?」なんて余裕な声音で囁きかけてくるから。
(――むしろ、痛い方が気持ちいいって言ったら俺は変態か?)
「好きにしろ」
それだけ呟くと後はもう、くぷと音を立てて狂おしい甘美に蕩けながらいきり立った欲望を従順に呑み込み、快楽への階段を足早に駆け上がっていった。
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