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疲れているのに相手にしてくれない親友。
夜も更けた頃。帰宅した俺は、ただいま、とリビングを覗き込んだ。親友にして同居人の橋本はソファに座りテレビゲームをしていた。俺に気付き、しかし視線は一瞬だけしか寄越さずお帰り、と呟く。俺はゲーム以下か。一方、もう一人の親友かつ同居人の綿貫はダイニングテーブルに置いたノートパソコンを睨み付けていた。大学で難しい課題でも出たのかね。鞄を仕舞い、手洗いうがいを済ませてから橋本の隣へ腰を下ろす。そして、疲れたぁ、とソファの背もたれに体を預けた。お疲れ、と抑揚の無い声が返って来る。
「マジで疲れた。マジで。今日は一限から四限まで授業を受けて、その後五時間バイトだったんだよ? 家を出たのが朝の八時で帰ってきたのが夜の十時! 有り得なくない?」
ふうん、と全く感心の無い返答を橋本は寄越した。疲れたんだよぉ、と不愛想な親友の肩を揺する。
「やめろよ田中。ゲーム中なの、見ればわかるだろ」
「知―らーんー。つーかーれーたー」
「子供か。風呂入ってくれば?」
「掃除はしてある?」
「田中、お前が今日の風呂掃除当番だ」
「代わってくれよぉ。お前の次の番には俺がやるから」
「嫌だ。今、いいところなんだもん」
テレビを見遣ると銃撃戦の真っ最中だった。人を殺めながら日常会話に応じるな。
「ケチ! いいよ、綿貫に頼むから」
立ち上がり、えらく眉を寄せた綿貫の横腹をつつく。途端に、うわっ、と悲鳴を上げた。
「な、何だ。突然のセクハラか!」
「前置きしてから触る奴はいないだろ」
「うおっ、田中! いつの間に帰ってきた!?」
「気付いてなかったんかい! どんだけ集中していたんだ」
画面を覗き込む。そこに表示されていたのは。
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