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「あの、三角さん…」  ある日突然、小花くんから声をかけられた。 「…え⁈」 「こないださ…僕とイッチーが休んだ日に、横沢が三角さんのノート撮らせて貰ったじゃん?」 「あ、あぁ…うん」 「あれ、僕らも写させて貰ったから…ありがとう」 「そうなんだ…うん。わざわざそんな」 「ノートのここにさ、"アズールトピア"って…」  そう言いながら、小花くんは携帯画面を2本の指で拡大した。 「……あ」 「これ、この前リニューアルした水族館の事だよね?」 「うん、そう。後ろの席でその話してて…後で検索しようと思ってメモしたままだった」 「好きなの?」 「えッ」 「海月(くらげ)…描いてるから」 「あぁ、まぁ…うん。好きっていうか」 「良くある"海月になりたい"的な?」 「ああ、まぁ…なりたいって言うか、だったら良かったのにって言うか…」 「ん?」  思わず溢れ出してしまった本音は、小さすぎて小花くんの耳までは届いていなかった。 「ううん、別に」 「あの、もし良かったら……い、一緒に行きゃ…行かま、行きませんか?」 「……え?」  あまりにも突然の誘いに思考が停止して、その後の小花くんの言葉を私は途切れ途切れにしか聞いていなかった。  ただ…「リニューアル」「バリアフリー」という単語はハッキリと聞き取る事ができた。  きっと市原くんの為の下調べをしに行きたいのだろうと解釈(かいしゃく)した私は、この降って沸いた様なチャンスに 「良いよ。一緒に行こう」  と返事をした。 「え、え⁈じ、じゃあ…テスト最終日の次の日とかで良い?」 「うん…分かった」 「じゃあ、はい」  そう言って小花くんは右手の小指を立てて手を伸ばしてきた。 「何?」 「え?何って約束……」 「そんな事しなくても、約束くらい守るってば…」  "ゆびきり"って、どうして小指じゃなきゃいけないんだろう。  どうして……
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