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全裸で気持ちいいサドル
夏休みのある日
まだ日も昇る前の薄暗い時間
救急車のサイレンの音をぼんやり聞いた気がした
まさかそれが身近な人の不幸とはそのときは思いもしなかった
それから何時間が過ぎたのか日はもうのぼり蒸し暑い中あらためて目を覚ますとちょうど家の固定電話が鳴った
今どき固定電話が鳴るなど珍しいそれもこんな朝早く
電話に出た母の声はかしこまっているように感じた
そして母は驚嘆の声を上げそれきり何も言葉を発することがなく目は虚ろに宙を泳ぐのがわかった
慌てて父を起こしに母が走る
菜摘が
菜摘が
そういえば姉の姿が見えない
姉に何かあったのだとすぐに勘づいた
慌てて両親はクルマで出て行った
まだ夜も明けきらぬ堤防近くの急な下り坂の橋の欄干に自転車の女性が激突し打ちどころ悪く亡くなったとニュースで知ることとなった
そしてその女性は全裸であったという
わたしは高校生の姉の性癖を、こっそり盗み見した日記で知っていた
電車などでわざとスカートを手繰りあげて下着を見知らぬ男性に見せること
誰に見咎められるかわからない公衆で全裸になると激しい快感を覚えること
自転車のサドルが女性器に擦れ気持ちよく何時間も乗り回し何度も逝ってしまうと
それが姉の性癖であったのだ
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