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花の都とも呼ばれているイタリアのフィレンツェは人気の観光地の一つである。ルネサンス時代の数多くの建築に観光客は足を止め、写真を撮ったり笑顔を浮かべている。
そんな観光客の横を一人の男性が通り過ぎた。周りの美しい建築物には目もくれず、ただ黙々と目的地を目指す。彼の胸元にはロケットペンダントが揺れていた。
フィレンツェにある教会の前で男性は足を止める。ここが彼の目的地だ。
「……エミリー、君と約束した場所についたよ」
男性はペンダントに向かって話しかける。風が吹き、ペンダントが微かに揺れた。
これは、とある男女の小さな恋の物語である。
物語の始まりは数年前に遡る。舞台はシカゴ。
高校生のリオン・ワトキンズは、授業が終わった後、ゆっくりとした足取りで住宅街を歩く。高校から家までの距離はそれほど遠くなく、すぐにリオンは自宅に辿り着いた。
赤い屋根が特徴的な家のドアノブに触れ、リオンは深いため息を吐く。そして家の中には入らず、踵を返して再び歩き出した。
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