透明なエンゲージリング

3/6
前へ
/6ページ
次へ
絵本ならば幼い頃に読んだものがあるだろう。そう思いながら絵本コーナーへと足を進める。図書館の中には、平日のためかほとんど人がいない。 刹那、図書館の窓際の椅子に座る人を見かけてリオンの足が止まる。リオンとそれほど歳が変わらないであろう女性がいた。 女性は大きめの白いフード付きの服とチェック柄のスカートを履き、その頭には帽子をすっぽりと被っている。分厚い小説を熱心に読んでいるその姿に、何故かリオンは目が離せなくなった。 (綺麗な子だな……) 初対面で名前も知らない女性に、リオンは何故かそう思ってしまった。 それから数日。リオンは学校が終わると図書館へ行くようになった。図書館に行くと、いつも窓際の席にあの女性がいる。いつも大きめの服を着て、青い瞳を煌めかせながら小説を読んでいる。 (いつも図書館にいる。学校は行ってるのかな?) 見かけるたびにリオンの中で女性の存在が大きくなる。そして土曜日。朝から図書館に行ったリオンは、勇気を出して声をかけてみることにした。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加