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「あの、いつもここで本読んでますよね」
そう話しかけると、女性は本から顔を上げた。そしてリオンを見て少し驚いた表情を見せる。淡いピンク色の唇がゆっくりと動いた。
「あなたも、ここ数日毎日来ていますよね」
ドキリとリオンの心臓が跳ねる。リオンが女性を見ていたように、彼女もまたリオンのことを見ていたのだ。
「俺、リオン・ワトキンズって言います。歳は十五歳。君は?」
「……私は、エミリー・テイラー。リオンと同じ十五歳」
エミリーが微笑む。笑った顔を見るのは初めてだった。リオンの胸が高鳴る。誰かの笑顔を見て、これほど綺麗だと思ったことがなかった。
リオンはエミリーの隣に座り、司書に見つからないように小さな声で話す。まるで長年会っていなかった友達のように、二人の会話は弾んだ。
リオンは学校が終わると図書館へ行くようになった。図書館に行けばいつもエミリーがいる。同じ窓際の席で、分厚い小説を熱心に読んでいる。
「エミリー」
名前を呼んで彼女の隣に座る。エミリーは本から顔を上げ、リオンの方を見て微笑んだ。
「リオン。学校、お疲れ様」
「今日は数学の小テストがあったんだ〜。数学苦手だけど、エミリーが公式教えてくれたおかげでなんとかなったかも」
「人に教える初めてだったからあんまり自信なかったけど、そう言ってもらえると嬉しい」
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