【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

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「そうかしこまらずとも良い。……相変わらず眼光が鋭いな。ブルーノが怖がるでは無いか」 「そういう顔なので」 「だが」 「そういう顔なので」 「陛下、団長の表情が崩れるのは奥方の前だけッス」 「そうか。そうだな。……そのラリオノフ騎士団長の奥方についてなのだが、ブルーノが一度会いたいと言い出してだな」 「お断りしても?」  近衛騎士たちの表情が強張ったがどうでもいい。陛下も苦笑しつつ、手を上げて近衛騎士の動きを制した。 「それは困るな。なにせ滅多に我が儘を言わないブルーノが、公爵夫人に会いたいと言っているのだ」 「妻に?」 「なにこの子が欲しているのは母親ではなく、ツガイのほうだ」 「……?」  基本的に【運命のツガイ】となる相手が、複数人いることはまずない。となれば考えられるのは、妻の子、つまり私の──!? 「へ、陛下。まさか、妻が妊娠し、それも殿下のツガイになる可能性がある……と?」 「そのまさかだ。どうやら息子は今日不思議な夢を見たようで、【運命のツガイ】に近々出会えること、そしてその母と子──つまり妊婦が危険な目に遭う可能性があるのだとか」 「なっ……」  後頭部を強打されたような衝撃が走った。ナタリアと私の子に、危険が!?  ふと今朝の妻の言葉が脳裏によぎる。 『その……、私旦那様と同じくらいに大切な……(赤ちゃん)ができたので、その……だから、私が守らないといけないの。そのためにも旦那様とはお別れしたほうが、旦那様のためでもあると思うのです』 『つまり……私以外に好きな男ができたと?』 『まあ、まだどっちだか分からないわ!』  大切な人。てっきり異性だと思っていたが、私とナタリアの子供なら、私と同じくらい大切だと言われても納得できる。それに『まだどっちだか分からないわ』という発言。思い返せば、今日の妻はどこか様子がおかしかった。  ジークが言っていたとおり、妊娠してネガティブになっている? いやナタリアは私のためと言っていた。これは──。
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