【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

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「王城にも妊娠した上級侍女、女官がいたのも、ブルーノは気づいたのだ。そしてその二人から話を聞くと、双方ともに今朝方妙な夢を見たという。詳細は分からなかったが、未来予知のような少し先の未来だとかで、その二人も近い未来事故や事件に巻き込まれる可能性があるから、と辞表を人事課に掛け合っていたのだ」 「夢……(ナタリアの様子がおかしかったのも、離縁を言い出したのも今朝だ。他の侍女と女官も退職を選んだ。……現状を変えることが未来を変えると思った? あるいは王都にいることで、身の危険を感じた?)」 「その様子を見るに、夫人も何か思うところがあったのかな?」  陛下の鋭い指摘に「そのようなところです」と言葉を濁した。さすがに「離縁したい」と言われたなど、言葉にしたくなかったので誤魔化した。  歯切れの悪い返答に、陛下は怒るわけでもなくブルーノ王子に視線を向けた。王子は陛下とそっくりな深紅の瞳は、私を見返す。 「ぱぁてぃーをするから、ふじんも、きてほしい」 「ブルーノ! そうか。そうだな。急に呼び出すような形だと夫人も驚いてしまうことを失念していた。夫人が妊娠している可能性も考慮して、当日は座る場所や、休憩室も確保するだけではなく、護衛の数も必要だな。さすが私の子だ。なんと聡明で賢いのか」 「ちちうえなら、そうかんがえるとおもった」 「あははは、そうか。それは嬉しいな」  一気に子煩悩まっしぐら──父親の顔で、場の空気が和んだ。確かに用件も無く王城に呼び出すよりは、良いのかもしれない。だが離縁を考えている彼女が承諾してくれるだろうか。離縁、嫌だというか彼女と別れるなんて無理だ。 「数日後に王家主催のパーティーを行う。夫人と一緒に参加するように」 「陛下。……善処いたします」  そう答えながら、まだ仕事も始まっていないのに、もうナタリアに会いたくなった。思えば今日は行って来ますハグも、キスも無かったのだ。  ああ、帰りたい。  ふと王子の両手に灰色の毛玉のようなものが見えたが、気のせいだろうか。  4.  やってしまった。
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