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「旦那様、私もボリスに賛成ですわ。朝は最終手段を口にしてしまいましたけれど、私だって旦那様とお別れしたくないです。でも恐ろしい未来を回避したい。それなら悪夢の原因を断ち切るためにも、多少の危険を冒してでも動くべきでは?」
「ナタリア……。でも私は心配だ。君はこんなに愛くるしいだろう、他の男にダンスや声をかけられただけで……一族もろとも滅ぼしたくなる」
「ならないでください」
「そうです。そこまでする気なら分身魔法を奥様の傍につけておけば良いのではないでしょうか」
「そきうす?」
聞き慣れない言葉にジッと旦那様に説明を求めたのだけれど「上目遣いが、狡い。可愛い」と言う言葉が返ってきた。そうではないのだけれど。
「旦那様?」
「見たほうが早いだろう。分身魔法」
ぽん、と旦那様の手のひらに鳶色の小鳥が現れた。つぶらな瞳で、ふわふわで小さくて可愛らしい。「チチッ」と鳴いた後で、その小鳥は翼を広げて私の肩に止まった。可愛い。
てててっ、と私の頬に触れる羽根はとてもふわふわで、旦那様と同じ香りがする。思わずキスをすると小鳥は「ピー」と照れた。
「妻からのキス、妻が可愛すぎる」
「旦那様……(分身魔法だから感覚共有しているって説明を放棄しましたね)」
「旦那様。この子と旦那様がいれば大丈夫ですわ」
「うん。君に手を出そうとしたら、反射と電撃で痺れるようにしておこう」
それは大丈夫なのでしょうか。確実に襲われる前提なのが少し怖いですが……。そうと決まったらと、旦那様は仕立屋や職人に連絡を取り始め──私のドレスを特注で作ると言い出した。
ここぞとばかりに旦那様に色んなドレスを着てほしいと頼まれて、結婚式以来とんでもないドレスができる予感が。
その後もパーティーでの打ち合わせなどで、旦那様に妊娠していることをすっかり伝え忘れてしまったのだった。
5.
パーティー当日。
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