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「おはつにおめにかかります。ぶるーの・おるぶらいと・えいでんです」
「ブルーノ殿下、ご挨拶いただき光栄でございます。イグナート公爵の妻、ナタリアと申します」
挨拶もしっかりとできている王子に感動しつつ私も挨拶を返したのだが、王子はどこかそわそわしている。王子と同じくらいの目線に合わせて屈んでいるのだけれど、何か言いたいことでもあるのかしら?
「ブルーノ殿下、私に何か話したいことでも?」
「はい……ほんじつは、ふじんに、かれをみてほしくて……」
そう言って両手を私に差し出した。そこには毛玉ではなく震えてうずくまる小さな雀がいた。ボロボロでとても弱っている。私の肩に居る小鳥は何も反応しないので悪いものではないだろう。
そっと羽根を撫でると、今まで震えていた灰褐色の雀がビクリと大きく動いた。顔をあげて眼光の鋭い瞳が私を射貫く。それは金色の瞳で見たことがある。
「イグナート旦那様?」
「──っ、ちゅんんん!」
今まで死にそうなほど弱っていた灰褐色の雀は飛び上がり、私の傍に歩もうとするが衝動を堪えているように見えた。そんな葛藤している灰褐色の雀にそっと触れた瞬間、訳も分からず涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。
深い後悔と、自分自身への怒り。懊悩が伝わってくる。
ああ。彼、いいえ、この方は──。
「旦那様。そんなに自分を責めなくても、あれは事故だったのですよ」
ふと気づいたらそう呟いていた。ボロボロの羽根に触れた瞬間、彼が何者なのかはっきりと分かった。こんな姿になってまで、私を追いかけてきてくれたのね。一ヵ月後、一度私が終わってしまった世界のイグナート様──旦那様。どういう法則あるいは魔法を使ったのかは分からないけれど、この旦那様は私が一度終わってしまったことを知っている。そしておそらく私が時を逆行したのは、旦那様が関わっているのね。
両手で抱きしめて、そっと頬に近づけた。
「ちゅっ!? ちゅんんん!」
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