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でもとってもリアルだったわ。もしかして……予知夢とか。それとも時が巻き戻った? でも四大公爵家の持つ魔導具だったらあり得るかしら?
「ナタリア?」
「……っ、あの」
「無理しないでいいから、ゆっくり起きるといい。私は仕事があるから先に食事を取っているよ」
チュッと唇にキスをする旦那様は、いつも通りだった。優しくて私がよく知っている旦那様だわ。頭回らないのは空腹だからだと結論づける。
ふと窓の外には旦那様から贈られたダリアの花が咲いているのが目に留まった。白いダリアはとても美しくて、秋の季節が近づくたびに旦那様と一緒に散歩したわ。
あら? ちょっと待って。
ついさっきまで私は、結婚記念日の前日だと認識していたわ。私と旦那様の結婚記念日は11白銀乃月13日目。
悶々と考えている間に、侍女たちがやって来てきたので着替えることに。侍女の一人アンナに今日の日付を尋ねたら、不思議そうな顔をしつつも「霊星歴1879年10豊穣乃月12日ですわ」と答えてくれた。
あの未来の一ヵ月前だとしたら、私のお腹にはもう……。11白銀乃月12日目の昼間、主治医から「妊娠四ヵ月」だと教えてもらった。
とても幸せで早く旦那様にお伝えしたくて、それなのに旦那様はその日、私の手を払いのけた力が思ったよりも強くて、私は運悪く階段から落ちた──。
「──っ」
今更ながらに思い出して、ゾッとする。
あれは悪夢ではなく現実で、そしてどういうわけか過去に戻ってきた。どうして過去に戻ったのかは分からないけれど、あの事故が起こる一ヵ月前なら回避ができるのでは?
***
着替えが終わったので、旦那様が食事をしている部屋に急いだ。
冬の模様替え前の屋敷の廊下は落ち葉のカーテンレースが綺麗で、少しだけ気持ちが落ち着く。壁に飾ってある肖像画を通り、歴代公爵家の当主とその家族が視界に入る。
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