【短編】大好きな旦那様の【運命のツガイ】が、私ではなかったとしたら?

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 食事をしていた旦那様はナイフとフォークを持っていた手を止めて、ぱぁと花咲いたような笑顔を向けてくれた。背中の羽根がばさーっと生じるのは、嬉しいからで大鷲族の習性だとか。  傍には執事長の青年ボリスが今日の予定を話していた。私は旦那様と向かい合わせに座り、姿勢を正す。 「旦那様、お願いがあるのです(極めて自然に、まずは別居、あるいは実家か旦那様の領地に静養する感じで話を持っていく。それで問題の一ヵ月後はこの屋敷に居なければ、あの事件は起こらないわ! 我ながら完璧)」 「なんだい? 愛する妻のためなら、なんでも──」 「私と離縁してください」  がしゃん、とナイフとフォークが皿の上に落ちる。旦那様は固まっているし、ボリスは数秒で復活したのか「ええっと、奥様?」と正気を疑う目を向けられた。  あ。  ああ、いけないわ。初手で最終手段を口にしてしまった……。思っていた以上に気持ちが逸ってしまっていたと反省する。 「ナタリア……今、なんと?」  背中の羽根がばっさ、ばっさ揺れている。衝撃だったのかいくつか羽根も抜けてしまって痛ましい。さらに旦那様の表情が鋭くなり、凶悪犯並みに顔が強ばっている。本気で怒っている旦那様も痺れるほどかっこいい──じゃない。 「その……、私旦那様と同じくらいに大切な……(赤ちゃん)ができたので、その……だから、私が守らないといけないの。そのためにも旦那様と離れたほうが、旦那様のためでもあると思うのです」  あれれれ?  口を開けば開くほど弁明ができない。これはダメだわ。朝食前でお腹が減っていて語彙力が乏しくて、変な言い回しになってしまった。致命的にダメな単語も出てしまっている。どうして食後にしなかったのかしら。ぐすん。 「つまり……私以外に好きな男ができたと?」 「まあ、まだどっちだか分からないわ!」  反射的に答えてしまった。察しのいいボリスは何か勘づいたみたいだけれど、旦那様は怒り心頭でゴゴゴゴゴッ、とすさまじい圧が。
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