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「は? 大体、噂ってなんだ?」
「そりゃあ、四大公爵家の一角であるワン家のご令嬢が熱を上げていたら、噂になるッスよ。まあ、ご令嬢の狙いは玉の輿であって、団長自身に惚れたって感じじゃないのは丸わかりだし、大半は【運命のツガイ】である妻帯者に無意味だって分かっているッスけど、それは亜人族の感覚で人族は違うッスからね」
「人族……」
確かに人族には【運命のツガイ】だと感じる感覚はないらしい。だからこそ愛されていることに不安にもなると。そう言えばあの令嬢は人族の血が濃いので、名前もワン家にはそぐわない名を付けられたとか。不憫ではあるが、こちらの家庭を引っかき回すのなら、容赦はしない。
「と・に・か・く、人族には愛情表現をしっかりすることが一番ッス。甘い言葉や贈り物とかではなく、本気だと分かってもらわないとダメッス!」
「妻を不安にさせない」
「そうッス。まあ、結婚前のマリッジブルーとか、あるいは子供ができると少しネガティブになるとか」
「子供……(ナタリアとの子供……天使だな、超絶可愛い)」
「団長?」
「……妻に会いたくなってきた」
「今日は定時で仕事を終わらせるようにと調整するので、しっかりと話し合いをするッスよ!」
「ああ。頼む」
そこでいつもは話が終わるのだが執務室に入った瞬間、客人用のソファに国王陛下が腰掛けていた。後ろには近衛騎士まで勢揃いで、いつから居たのだろうか。
「やっと来たか、ラリオノフ公。いや騎士団長」
「国王陛下!?」
驚きつつも、副官のジークと共に片膝を突いて頭を下げる。アンブローズ・オルブライト・エイデン国王陛下。金髪に獅子の耳、深紅の瞳、がっしりと体格で強面に見えなくもないが、非常に温厚かつ有能な王は民にも臣下にも慕われている。
そんな国王陛下は子煩悩で、今年四歳になるブルーノ第三王子を抱っこしている。微笑ましい絵面だが、いったいどんな要件なのだろうか。騎士に興味を持ったご子息のために足を運んだ?
「陛下、本日はどのようなご用件でしょうか?」
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