アンティークテーブルの上がふたりの約束の場所

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 その指輪はアンティークショップのショーケースの…………秒針を刻まない金の懐中時計の傍らにひっそりと置かれていた。  指輪など縁もゆかりもない僕の目になぜそれが留まったかと言うと……  僕がアンティークショップへ立ち寄ったからだ。  僕がなぜアンティークショップへ立ち寄ったかと言うと……  アンティークの家具をこの目に焼き付けたかったからだ。  なぜアンティーク家具をこの目に焼き付けたかったかと言うと……  僕がマンガを描くからだ。  なぜ僕が賞などかすりもせず、持ち込みしても捨て置かれるマンガを描くかと言うと……  それは、今はすっかり疲れてしまって  分からない……  諦めきれない夢?  惰性?  意地?  自己顕示?  自己肯定?  承認欲求?  どれも当てはまる気もするし  そうでない気もする。  いずれにしても  僕はつましいパンの為に働く身の上だから  アンティークショップなど  “冷やかし”で入るしかない。
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