用意されていた朝ごはん

1/1
前へ
/5ページ
次へ

用意されていた朝ごはん

 結局、答えが見つからないまま朝を迎えた。私は着替えて髪をまとめ、玄関横のキッチンへ向かった。 「え?」  いつも食事をするダイニングテーブルには、食パンとミカンと、牛乳を注いだコップが二人分並べてあった。  私はシンクのほうを見た。  そこには、コップとパン皿が1組あった。シンクの洗い桶に放ってあるのではなく、きちんと洗って、カゴに収められていた。 「……顔、合わせたくなかったんだろうな。」  いつの間にか背後にきていた夫が言った。 「そうね……。」 「でも、嫌われたわけじゃなさそうだな。」 「そう……よね。」  まだ包丁も使ったことがない娘が、わざわざ用意してくれた朝食を前に、私達はしばし立ち尽くした。  とりあえず二階に行ってみたが、娘の姿はなく、ランドセルもなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加