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プリンスの後悔(プリンス視点)
「プリンスさんはいつまでも若いわねえ」
最初は褒められた。
「プリンスさんてね、あれで六十歳なのよ」
次に気味悪がられた。
「おやじが、俺より若いのは気持ち悪いよ」
家族さえ、毛嫌いした。
でも俺は顔がいい。
顔だけで女はバカだから、いくらだって引っかかる。
生活には困らない。
「他人の戸籍を盗んだな!」
「盗んでません」
「こんな百二十歳がいてたまるか!」
「不老不死なんです!」
なぜか捕まった。
監獄で百年過ごすと、死にたくなった。
撃たれてもかまわないと、逃亡した。
なのに、撃たれても死なずに逃亡成功。
「どこだ、ここ……」
たった百年で知らない町だった。
店があるのに、どうやって支払うのかもわからない。
金でもスマホでもない。
電車にも乗れなくて、歩いて田舎に向かった。
前世の記憶で、漁ができる。
「漁禁止区域です!」
俺はまた捕まった。
「よかった」
「は?」
本当は食べなくても死なない。
けど十日間も歩くと、孤独と不安で押しつぶされた。
人間扱いされず、永遠に一人で生きるんだ。
さみしくて、恐ろしくてたまらない。
人魚なんて化け物、なんで食べちゃったんだろ。
ああ。今や、俺が化け物か。
───── 先輩視点 ─────
あの人魚の子、元気でやってるかしら。心配だわ。
実は私、永遠に生きるメデューサなの。
私も昔は、うっかり石化しちゃったもんよ。
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