エピソード4 あるべきではないもの

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エピソード4 あるべきではないもの

11 月29日、会わないでと言ったのに、出張に持っていくリュックの中に、とんでもないものを見つけてしまった。 彼女の名前を型どった金のネックレスとダイヤとルビーの指輪。 夫はそこまで彼女にはまっていたのだ。 車をあげてる時点でおかしいとは思っていたけれど。 ものすごい落胆が私を襲う。 私たちまだ結婚してるよ。 離婚がちゃんとするまで待ってって言ったよね。 彼は私のことなどなんとも思っていないのだ。 衝動的にそれらを持って、庭の池に投げた。 いやするべきだと思ったのだ。 私が彼の妻であり、彼女はただの他人であり、今会いに行くべきな人ではないのだ。こんなものがあってはいけない。 投げたが、アクセサリーポーチと一緒に水面に浮かび上がってきた。私はそれを見えないように底に落とす。パッケージは別のところに隠した。ゴミ箱に捨てたら、すぐわかってしまう。 彼が帰ってきてから、見知らぬふりをしたが、庭には監視カメラがあることを思いだし、心臓はバクバクしていた。 隠し場所をもっと考えるべきだったと後悔した。 というか、なくなったのに気づいても言ってこないかもしれない。 だって何て私に問うの。 30分もしないうちに、 夫は私に彼の部屋に入ってないか聞いてきた。 リュックにあるものがないと。 私は机の書類は取ったと言った。 離婚の手続きに必要なものだった。 今週、彼は何度嘘をついたかわからない。 私がいくら嘘をついたって、全く悪くない。 夫は真剣に探し始める。 仕事のもので、ないと困るものだと。 またすごい嘘。 どうしてこんなにずっと嘘を続けられるのかわからない。 部屋からなくなるはずはない。 今度はアクセサリーポーチの色や大きさを伝えてきた。 彼女へのプレゼントとは言えない彼に、心の中で苦笑する。 私はまた書類しか取ってない。 それないと仕事困るのと聞いてあげる。 彼の嘘より私はこんなに演じられる。 仕事に絶対ないと困るんだと、 部屋の家具まで動かして探し始める。 そんなに彼女のことしか考えられないのかと私は傷つくが、子供の夕飯を支度をしなければ。 私はたんたんと料理を始める。 今日は久々の魚、サーモンだ。 まあ、日本語だと鮭の塩焼きだ。 ブロッコリーとにんじんを茹でる。 トマトとラズベリーといちごを用意して。それと白米。 まあ、アメリカの食卓でこれだけ食品の種類があれば、いい方だろう。 お味噌汁とお漬け物とかがあれば、日本でも十分かもしれない。 日本食をなかなか買えない場所に住んでいるので、離婚後は子供のために料理を頑張りたい。 夕飯をつくり終えて、くらくらしてきた。 夫は外にあるゴミ箱のビンの中身を音をたてて探していたが、全て確認したようで、またこちらに向かってくる。 私はしゃがんで頭を両手で押さえる。 夫は私が頭痛があることがわかっている。今週ずっと泣いてきたのだから。 しかし、そんなポーズを見ても、 夫はまた私にそれのありかを聞いてくる。 なくなるはずないと。 焦っていた様子が、もう怒っている。私がやったのだと確信してきている様子。 私は何度も言ってるけど、書類だけとった、もうずっと寝れてないのになんとか頑張ってごはんつくったんだからと迫真の演技。 いや具合が悪いのは真実なのだから、演技ではないのか。 夫は私の具合の悪さなんて気にしなかったが、私が嘘をついてるとは思わなかったようで、また自分の部屋に探しに行った。 あなたは今週一体何度私に嘘をついたの?まるで私が疑うのが悪いかのように言ってきたよね。 あなたがしたことは私への、子供への裏切りだよ。 こんなプレゼントがなくなったって、私が感じてる辛さの何分の一? 彼は3時間は探し続けたようだ。 私は体調が悪いので、7時にはベッドに向かった。 庭で音がしたときはとても焦った。 しかし猫かなにかだったのかもしれない。 もし私がやったとばれたら、夫は何をするかわからない。彼は暴力反対派だ。私がちょっと小突いただけで、暴力だと怒ってくる。だが、今恋に狂った夫は冷静な判断ができなくなっている。 離婚の際の渡すお金を下げるくらいは言うだろう。そんなことをしたら離婚が長引くだけだが。 結局、寝不足で気分が悪くてもずっと寝られなかった。 10時に水が飲みたくなって、キッチンにいく。夫は未だに家中をさがしていた。 私に怒った顔を向けていたと思う。私は具合が悪いパフォーマンスで通りすぎた。 私はやっと少し気分がよくなった。 こんなことで、うれしいのは人としてよくないのもわかる。 でもそうではない。 この離婚で傷つくのは私一人なのだ。 夫はおそらく彼女と早く一緒になりたい一心で、彼にとって離婚はお金をなくすだけ。 少しでも彼にダメージがあってほしい。 ずっと病気の彼を一番に考えていた私だった。コロナの時、わたしたち家族は誰とも会わなかった。彼のために。それで疎遠になった人もいた。徹底した。 そんなことはきっと覚えてもいないだろう。 今は死んでくれてもいいと思う。 むしろその方が子供の影響にはいい。 自分の父親が違う家庭の父親になろうとしてるなんて。 彼は自分の家族をスイッチしようとしているのだ。 そんな彼はわたしたちに必要ない。 映画ノートブックのように一緒に寝て寿命で死にたいといってたこともあったのに。 浮気がばれた時、言われたこと I love you, but I'm not in love with you. そんなことないよね。 あなたは私をもう家族とも思っていない。 あなたのせいで私もこんなに嫌な人間になってくる。
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