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「清太郎! また遊ぼうね!」
「遊ぶってなんだよ!」
思わず現代で友達にするように声を掛けたら、馬鹿にするような返事が返ってきた。でも、清太郎は笑っている。よかった。が、さすがにこの言い方は子どもっぽすぎたかもしれない。
隣を見ると、おとっつぁんも苦笑している。
けれど、すっと目を細めると、
「昔のように仲良くなったんだなあ。よかったよかった」
しみじみと呟きながら頷いた。
優しいおとっつぁんのことだ。親の事情で私と清太郎の仲が悪くなってしまったことを気に病んでいたに違いない。
「うん! すっごく仲良しだよ!」
「それはよかった」
私とおとっつぁんは顔を見合わせて笑う。
色々誤解もあったけれど、今はみんな幸せだ。
と、思ったけれどなんだか今度は弥吉が不機嫌そうな顔をしていた。
「わ、ごめん。ずっと待ってて疲れたよね」
「おお、そうだそうだ。もう今日は休んでいいからね。ご苦労だったね、弥吉」
「ありがとうございます、旦那様」
一応おとっつぁんにお礼は言ったものの、むっつりしたまま弥吉が行ってしまう。
やっぱり、お芝居の間ずっと待っていたのは疲れたに違いない。
「弥吉には無理をさせすぎたかな。美津も疲れただろう? ちゃんと休むんだよ」
「え、私は元気だよ」
「いや、お前のことだから力一杯役者に掛け声なんか掛けていたに違いないからな」
「う」
よくおわかりで。
「さすがおとっつぁん」
「それくらいわかるに決まっているよ。大事な娘のことなんだからね。けれど、そんなに楽しめたならよかったじゃないか。さ、部屋に戻って休みなさい」
「はーい」
おとっつぁんに言われて私は自分の部屋へと向かう。その途中で、
「おかえりなさいませ、美津様」
「春ちゃん! ただいま」
奉公人の春ちゃんがいた。
春ちゃんは私と同じくらいの歳の女の子だ。ということは、話も合って話しやすいということで、
「白浪小僧のお芝居どうでしたか?」
「すっっっっっごくよかった!」
「わぁぁぁあ」
開口一番、聞いてきてくれたのが嬉しかった。やっぱり、清太郎には悪いけれどこういうのって女の子同士で話すのがすごく楽しい。
「美津様が行かれると聞いて気になってたんです! 帰ってきたら感想を聞こうとお待ちしていましたっ!」
どちらかといえば大人しめの春ちゃんでも白浪小僧のことになるとミーハーな感じなっている。それほどまでに白浪小僧は江戸っ子に人気なんだなと実感する。
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