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プロローグ
結婚式は一生涯続く幸せな時間の始まりだ。
「おめでとう」の声が飛び交う中、キラキラ輝いているこの瞬間を新婦の私(笹山優香)は一生忘れないでいようと心に誓った。
夫になる笹山弥彦は大手企業の営業マンだ。容姿端麗で、優しく仕事ができる人気者の彼が、派手さもなくおとなしい性格の私を見初めてくれたことが嬉しかった。
今日のために選んだ純白のドレスは、清らかな心を象徴するかのように輝き、レースのディテールが優雅さを添えていた。ドレスの裾がふわりと広がるたびに、まるで夢の中にいるかのような気持ちになった。
順風満帆で新しい門出をみんなに祝ってもらえて私は幸せだった。
『病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?』
私は緊張しつつも、牧師さんの問いかけに慎重に返事をする。
『はい、誓います』
その瞬間私の頬に涙が伝い、互いの絆がさらに強くなるのを感じた。
二人の愛を祝福するかのように、秋の穏やかな陽射しが、ステンドグラスを通して幻想的な光と影を描き出している。この神聖な雰囲気が、二人の誓いの言葉を一層特別なものにしていた。
この結婚式は、二人にとって新しいスタートであり、これからの人生を共に歩むための第一歩だ。
私は、希望と夢を抱きながら、幸せな時間を一生忘れないでいようと思った。
友人たちのライスシャワーの中、お互い微笑み合いながら弥彦さんにエスコートされ私は式場を後にした。外の世界は明るく、私の心は新たな未来への期待でいっぱいだった。
「あの頃はこんな風になるとは思わなかった」
私は静かになったリビングの中で、気力を失って膝をついていた。
疲れたように息を吐くと、床の上に散らばっている割れた茶碗のかけらを拾い集めた。テーブルの上で倒れたグラス。そこからこぼれたビールの雫が、ぽたぽたと私の頭の上に落ちた
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