水素爆発は約束の証

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「起きろー」  最初に声をかけてきたのはサジだった。 「むしろアンタは寝なさいよ」 「寝てるって、休憩もしてるよ。休日がないだけで」 「最後に家に帰ったのは」 「職場が俺の家だと思ってる。嫁さんは出てった、あっはっは」  結婚できたのが奇跡だよ。 「顔色悪い。そこに栄養剤あるから飲みなされ」 「賞味期限平気?」 「今日まで」 「……そっか。もらうわ。元気四馬力になる」 「微妙」  四馬力って。家電だってもうちょい頑張ってるぞ。 「なにで来たの?」 「チャリで来た。実は結構近いんだよ」  教えてもらった職場は十二キロ先。いや、頑張れば行けるけどさ。三百連勤のコヤツには相当辛い道だったのでは。 「いや、そんなに近くもないよね」 「おかげで今力尽きそう。栄養剤マジありがたい」  そう言ってごくごく飲んでいる。最後の一個だ、私はもう飲まないから飲んでくれてよかった。ちらりと見るとかなり高そうな自転車が置いてある。 「あれ、スポーツ用のやつ?」 「そ。稼いだ金をチャリに全振りしてたら嫁さんが口きいてくれなくなってた。あっはっは」  こいつはまったく。 「あ、なに。みんな来てんじゃん」  カスターかな。チワワみたいな甲高い声してたのに、なんともまあいぶし銀みたいな渋い声に。……って、待て待て。 「……どこで何してたの?」 「え? 表彰式からかけつけた」  カスターは……階級なにそれ。胸に凄い数のバッジをつけた軍服を着ている。どんだけ功績あげてきたの。 「ちなみに何の表彰?」 「テロ組織と繋がってた大統領の首へし折って来た」 「トノサマバッタ捕まえようとして足がもげてギャン泣きしてたカスターと思えない」 「男の子は虫で遊んで一人前になるんだよ」  とりあえず、返り血を拭きなさい。なんで表彰式で返り血あるのよ。量からして、相手の鼻血とかかな、ちょびっとだし。なんか気に入らなくてぶん殴ったのかな。 「お前のことディスってきた上官を血祭りにしてきた」  想像以上だった。 「変わらないな、ここは。十二年前と同じだ」  カスターが懐かしそうに周囲を見る。
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