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「みんな、私より大人になっちゃって」
私は十二歳のまま。みんなは年相応かな、まあこれ以上老けない設定になってるんだろうけど。
私たちは人なのか、機械なのか、もうわからない。わかっているのは、顔も知らない他人の為だけに生きて自分のためには死ねないってことくらいだ。
「一人にしてごめん、ずっとここに来れなくてごめんな」
カスターが私を抱きしめる。泣いてるみたいだ。泣き虫は相変わらずか。いや、大切な友達のためなら涙を流すのは普通、って思っちゃっていいのかな?
「みんなアンチプログラム植え付けられたからね」
私の存在は彼らを望まない方向に導くと判断された。親しくなりすぎた。だからみんなには十二歳で発動する拒絶プログラムを設定されていた。それをぶち壊してきてくれたのだから、嬉しくないわけがない。
「ここに来たかった。あれから俺らは道具として利用され続けたし、人間扱いなんてされなかった。ここでの生活が、先生たちの優しさが、アルテミスの笑顔が。俺たちにとって、唯一幸せだった」
「ここだけなんだ。ここが、アルテミスがいる所が俺たちの生きる意味なんだ。太陽が欠ける映像を認識することが、停止コードなんだろ」
「うん」
なんでそんな設計にしたんだろうね。人って本当、馬鹿みたい。私がそれを絶対に見るように設定されているからここは吹き抜けだし、私はずっと空を見続けている。
「無理だった、世界を止められなかった。だから、他の手を考えた」
「え」
みんながにっこり笑う。本体に繋がれていたコードを引っこ抜いて、みんなの首に備え付けられた接続端子につないだ。
「外に、出してくれるの?」
最後に私を外に連れて思い出作りとかしてくれるのかな。
「私らがそんなロマンチックなことで終わらせると思ってんの?」
私の思考がみんなに伝わる。ニヤッと笑うテミカ。みんなもニヤニヤ笑っている。これは、鐘を裏山に持っていって五右衛門風呂にしようと言った時と同じだ。みんなに繋いでもらって私も入ったけど。
「月に行こう、アルテミス」
「え」
「欠ける太陽を見なければいい。あの手この手で世界は、俺らの邪魔をしてきたけど。月に行けばいいじゃん! なんて、考えると思わないしやると思ってない」
「でも」
「月の破壊は早々に諦めて、防衛システム構築に頑張って来た俺を褒めてくれ」
わずかに残った通信システムで見れば、地球と月に配置されている各国の衛星がすべて同じシステムを使っている。
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