序 幕: 春 桜が咲く施設と特別支援学校

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「ちい、また、ここに居たのか。犬飼が、処置しに看護室に来いって」  電動車椅子に乗った高校生ぐらいの、薄い黄色の上下のトレーナーを着た男の子が言った。  彼の名前は、香月 直(コウヅキ ナオ)直は、千春より三つ上の高等部一年生。一五才の男の子。外見は、お笑いタレントのウッチャン、ナンチャンのウッチャンに、顔も体の白さも似ている。 何処か触れたら、壊れそうなのに、『心が強くこうだ』と思ったら、即行動に出る癖もある。 とても優しくて、自分が、身体の筋力を弱っていく病気で一番、辛いのに、皆に優しく、思いやりのあるというか ……男の人にあまりいないタイプ。  父性本能が人一倍強い。だから、千春の事を『ほっとけない』って、言って、出来の悪い妹を見るお兄さんように、よく面倒を見ている事から、皆から、『直兄ちゃん』って親しまれている。 「うん、じゃあ、僕、行くけど。直君も、行く?」  千春は、車椅子をこぎ始めた。
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