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日が沈みかけた頃に聞こえてきた花火の音。それを耳にすると同時に体が動かなくなった。
だけどそのことに驚きはない。だってこの現象は、物心ついた頃から体験していることだから。
俺の暮らす土地が何らかの災害に見舞われる。その少し前にどこからともなく聞こえてくる花火の音。
聞こえた音の数は、災害で亡くなる人の数だと教えられた。
でも、花火の音が聞こえた後、被災することを恐れて逃げようとしてもそれは叶わない。どうしてか、今いる土地を離れることができなくなるんだ。
近く災害が起こる。それを教えてはくれるけれど、巻き込まれないように逃げろという意味では決してないあの花火の音。
ただ、どれだけ人が死ぬかだけを前もって告げてくる。
一つ、二つ…五、十、二十…五十…三桁に突入してもまだまだ増える花火の音。
ここから逃げられない以上、その数に含まれるのは自分かもしれない。その恐怖に怯え、時に諦めながら、俺達は、素知らぬ顔で災害が起こるのを待つしかない…。
花火の音…完
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