7*体育祭本番

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緊張で感情がバグってる? それとも、黒須くんが男前すぎること言ってくれたから? 分からないけど、今は競技に集中しなきゃ。自分の感情について考えるのは、走り終えてから! 僕は一発自分にビンタして気合いを入れ直し、黒須くんと一緒にスタートラインに立つ。 「位置について、よーい……」 パァン! と、スターターピストルが開始の号砲を鳴らす。 「行くぞ梅木! 外側の足から一・二、一・二!」 「うんっ!」 黒須くんのかけ声にあわせ、必死に足を動かす。 大丈夫。僕はできる。黒須くんと一緒にたくさん練習したんだから。 グランドをぐるっと一周、黒須くんの声と歩幅にあわせることだけ考えて走り、ゴールテープを切る。 「やった! 僕ら一番だよ、黒須くん!」 「おうよ! だから大丈夫だって言ったろ!」 足をしばるヒモをとった後、黒須くんはジャンプして喜ぶ僕の肩を右手で抱き、左手でわしゃわしゃと僕の頭をなでる。 嬉しさが爆発しているせいか、髪がぐしゃぐしゃにされているというのに、黒須くんのその手が不快どころか気持ちいい。 「練習頑張ったもんな。お互い、おめでとうだ!」 すっごくカッコよくて特別な人の、近距離からの満面のキラキラ笑顔。 僕のこれまでの人生の中で一番まぶしくて、直視できないはずなのに、目が離せない。 彼を見つめること以外を放棄した、棒立ちになった僕を、黒須くんが抱きしめる。 僕を包み込む彼のたくましい身体、鼻腔に届く彼の汗まじりの体臭。 彼を感じるたびに、心臓がおかしいくらいドキドキするのは何故だ? ――あぁ、そっかぁ。そういうことかぁ……。 「すみませーん。この一位の旗持って、あっちに並んでくださーい」 体育委員に『1』の文字が書かれた旗を差し出され、数メートル離れた場所を指差される。 「はいよ。行くぞ、梅木」
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