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プロローグ
僕はニセモノだ。
笹紙つとむ(本物)が利用したサービス「君の頼れるコピーくん」で生み出された、いわばそっくりロボット。髪のクセから足の爪の形にいたるまで、瓜二つ。もちろん、体の大きさも、頭脳も、声も、歩き方もおんなじだ。
「ねえ、授業代わりに受けといてよ」
「土日の居酒屋のバイト、適当にやってきてよ。あ、みゆきちゃんがいるときは僕が行くから」
「地元の友達と遊ぶ約束しちゃったんだよね。めんどうだし、行ってきて」
「サッカー部、今日筋トレ集中dayだったな。代わりによろしく」
笹紙つとむ(本物)は、こんな風に、あるときは計画的に、あるときは思い付きで、僕にあらゆることを依頼する。主に、めんどうくさかったり、地味だったり、つまらなかったりすることを。
普段の僕は、彼からの依頼がくるまでクローゼットに隠されているダンボールの中で、三角座りの体勢で横向きに倒れたままスタンバイしている。充電がなくなってきたら、自分で首の後ろのところに専用のケーブルを差し込むことだってできる。そうすると電気が流れてきて、体のあちこちが元気になるんだ。
本物の人間に例えるなら、血液の流れがよくなるみたいにね。
なんにもすることがないときは、充電を長く保つためにもスリープ状態で待機するようにしている。頭脳は働いているけれど、体は動かない。ぱっと見ると、笹紙つとむ(本物)の置物がダンボール箱の中に詰まっている感じ。初めて見た人はぎょっとするかもしれない。
まあ、そんなことはいい。
僕には、野望がある。
それはね、いつかホンモノになること。
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