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ある日、ホンモノの殿は言った。
「これより、山に狩りに出掛ける」
俺は殿のフリをして狩りをすることになった。
で、ホンモノの殿はどこにいるのかというと、籠に乗って狩りの様子を見守る。
自分を暗殺しようとする勢力はどこの誰なのかを見極めたい、とのことであった。
俺には目立つよう白馬に乗って、狩りに行ってほしいとのこと。
護衛はついているとはいえ、かなり危険な仕事である。
しかし、これまで城の中でいい思いをさせてもらったのだ。
その分の仕事はしなくてはならない。
* * *
俺は白馬に跨がり、部下を引き連れ山に入った。
人気のない山道を進んでいくと、急に耳元で大きな音が鳴り、風を感じた。
矢だ。
矢が俺の顔をめがけて飛んできたのだ。
「曲者だ! 出会え!」
俺は素早く馬を降り、茂みに身を隠す。
部下たちは早速、矢を放った曲者を見つけて捕らえた。
「誰に頼まれた?」
狩りは中止となり、部下たちは捕らえた曲者を拷問にかける。
部下たちは残虐な拷問を行い、ついには指図した者は誰かを白状させた。
こうして、重臣たちの何人かが捕らえられ、極刑に処せられた。
「ニセモノよ、でかしたな」
ホンモノの殿が俺を褒める。
「恐れ多く存じます。それがしはただ、馬に跨っていただけでございます」
「いやいや、そなたがそっくりであったからこそ、曲者を捕らえることができたのじゃ。実にあっぱれじゃ」
こうして、俺は謝礼の品をごっそりと戴いた。
「まだまだ、城内には謀反を企てておる者がいるやも知れぬ。これからも宜しく頼む」
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