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ニセモノとして身の危険と引き換えに稼ぐことには、やはり抵抗を感じていた。
しかし、今の城内での暮らしは申し分なく、報酬もたんまりもらえるときたものだ。
もうしばらくはここで稼がせてもらうとするか。
自分のこんな、のっぺりした顔が役立つとは、いやはや、この顔に産んでくれた親に感謝せねばなるまい。
親……
もう何年も会っていない。
なにせ、俺は里から逃げ出したのだ。
親は俺のこと、もう死んだものと諦めていることだろう。
産んでくれたことへの礼くらいはせねば。
そう思い、俺は戴いたお宝を持って、こっそりと城の外へ出た。
殿の姿では怪しまれるので、元々着ていたボロを纏い、頭巾を被り、里へと向かった。
里に着き、懐かしの我が家が見えてきたのはよいが、なんと、廃屋になっているではないか!
父はどこだ?
母はどこだ?
頭巾で顔を隠しつつ、通りすがりの村人に聞いてみる。
「この家の者は、どこかに行ってしまったのでしょうか?」
「……あぁ、なにやら神隠しにあったようでな。はじめはせがれさんが消え、それから幾年かして、二人共消えちまった」
俺が消えたのは分かる。
黙って里を出たのだから。
しかし、父母が消えたのは、いったいどういうことなのか。
あぁ、俺はなんという親不孝者であろう。
城でぬくぬくと暮らしていた間に、父母はどこかに消えてしまっていたとは。
しかし、今の俺には力がある。
なにせ、ニセモノとはいえ、ここの領主なのだ。
部下たちを使って調べてみることにした。
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