12人が本棚に入れています
本棚に追加
入念に計画を練った。
殿だけを殺せば、俺がニセモノだと知っている重臣たちから、入れ替わりを疑われるだろう。
となれば……ホンモノの殿がやったように……事情を知っている可能性がある者すべてを始末すればよいのだ。
俺は提案した。
「殿。再び謀反の動きがあるようです。再び狩りに出て、曲者をおびき出すというのはいかがでございましょうか」
「そうか。その方はまた、危ない目に遭うとは思うが、それでもよいのだな?」
「そのための影武者でございます。このたびの狩りは、それがしが住んでいた山でなさってみてはいかがでしょうか。それがしには地の利がありますので」
「それは頼もしい。では早速、手配しよう」
かくして殿は、俺がニセモノだと知る重臣のみをお供にして、狩りに出かけた。
殿はいつものように籠に乗り、俺はいつものように白馬に跨った。
今回の狩猟は、俺が住んでいた山。
まさに、俺にとっては庭のような場所である。
地面が常にぬかるんでおり、足場が分かっていないと足を取られてしまう場所がある。そこまで一行を連れてくることができた。
さて、ここからが本番である。
一行が湿地に足を取られて右往左往している中、勝手知ったる俺は馬を降り、足場となる岩場をうまく辿って……殿の重臣たちを次々に斬り殺していった。
屈強なる護衛の兵士共も、この山の中では俺には勝てない。
こうして、俺は重臣たちをすべて斬り殺した。
何事かと籠から出てきた殿に向かい合うと、俺は言った。
「ニセモノには死んでもらうことにしました」
「何を言っておる!」
「殿はニセモノだったということにして死んでもらいます。そして、それがしが『ホンモノ』の殿になろうと思います」
「なんたる世迷言を!」
「ほう……では、それがしの父母を、なにゆえに葬り去りましたか?」
「…………知っておったのか」
「それがしは父母にも黙って山に住んでおりました。殿の影武者であることなど、父母は知るよしもなかったことでございます。何も殺すことはなかったのでは? 死んだ者は戻りませぬ。今こそ、親の仇を討とうと存じます」
「ま、待て。悪かった。褒美はいくらでも取らせる。許せ」
「殿こそ、なにを世迷言をおっしゃる。問答無用!」
俺は殿を斬り殺した。
殿や重臣たちの亡骸は誰にも見つからぬよう、錘を付けて泥沼に沈めておいた。
ニセモノだった俺が、ホンモノの殿となったのである。
最初のコメントを投稿しよう!