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俺は城に戻り、重臣たちは謀反を企てていたので誅殺した、と発表した。
これで、この城、この領地は俺のものとなった。
俺は親の仇を討ち、悠々自適な毎日を過ごしていた。
影ではなく、光の世界に出て過ごすこととなったのである。
影武者として過ごしていた甲斐あって、城内のどいつが謀反人かは、だいたいの見当がついていた。
ホンモノの殿には見えぬ真実が、ニセモノの俺には見えていたのだった。
領主の地位を脅かすものは皆、謀殺した。
こうして、俺は城内での確固たる地位を築き上げたのである。
山での貧乏暮らしとはおさらばだ。
俺は、蔵の中の財物を次々に取り出し、それを売って各地の名物料理を取り寄せた。
俺はついに金持ちになり、日々の食事に困らぬ暮らしを手に入れたのだ。
もはや、野山を駆けずり回って稼ぐ必要もない。
蔵の金を使って、美食三昧の日々を送った。
こうして、俺はどんどん肥えていった。
体型は変わっても、のっぺりした顔はこのままであった。
うまいものばかりたらふく食べ、体を動かすことはほとんどなくなったため、俺はすっかり太ってしまったのだが、それでもニセモノだと疑う者は誰もいなかった。
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