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職場の近くにあるアパートの前には、『野良猫に餌を与えないで下さい』という看板が立てられている。
猫は可愛いけど、そこいらに糞をされても困るし、半端になついて家屋に浸入されても困るから、餌をやらないでくれということなのだろう。
それでも、そんな注意などどこ吹く風で、餌を与え続ける人がいるらしい。
今日も、通りすがりに何匹化の猫が、アパートの側で何やら食べているのを目にした。
その群れの中に、明らかに猫とは違う何かがいたんだ。
大きさは猫くらいだけれど、ぱっと見ただけで猫ではないと判る。けれど何の動物なのかは特定できない何か。
それが、周囲の猫と一緒に餌を食べている。その様子を凝視していたらそいつがふいに顔を上げた。
慌てて視線を逸らしたため、辛うじて目か合うことは防げたが、こちらを窺う視線を強く感じた。
そそくさとその場を離れ、帰宅時はいつも通るその道を避けた。
以来、アパートの前は通らないようにしている。
猫だけならまだしも、あんなものが寄ってきてしまうのでは、そりゃあ、餌なんかやらないでくれと思うよな。
しかし、餌をやっている人は、あれの存在を知っているのだろうか。
もしし知りながらも、承知で餌を与え続けているのだとしたら、よほどの物好きか、あるいは、どうにか避けられた俺とは違い、目をつけられてしまって、強制的に餌を与え続けるしかない立場になってしまっているんだろうな。
野良猫に餌を与えないで下さい…完
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