観客と役者

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観客と役者

観客が芝居に果たす役割を侮ってはなら ない。お客は舞台が良ければ拍手喝采す るし、悪ければ途端に野次が飛ぶ。 その反応は即座に舞台上に波及して劇の 成果を左右する。 つまり、彼らは単なる傍観者ではなく、 積極的かつ即時的に演劇の創造に参加す るのだ。 このダイレクトな即時性は、役者と観客 が本来一体であることを示している。 そこがTVや映画などテクノロジーに よる再生芸術と演劇との大きな違いだ。 ◇◇ ブレイクを果した後、俺は財産の殆どを 注ぎ込んで夢だった自前の劇場を持った。 この劇場はまさに俺と妻との約束の場所 だった。 今日は、俺が初めて脚本と演出を務めた 舞台の初日。 客席では俺の下積み時代を支えてくれた 糟糠の妻と最愛の娘が、緊張の面持ちで 舞台を見つめている。
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