許せないくらい好き

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許せないくらい好き

 それから数日間、食事に薬を入れ続けたが、夫は元気に仕事へ出掛けていった。何度も、やめようと思ったが、彼の笑顔を見る度に、喉の奥が詰まった様に息苦しくなり、やめることは出来なかった。  浮気した夫のことは、許せない──でも、伯爵夫人の私に別れるなんて選択肢は永遠にやって来ないと思った。普通なら、実家に戻るという選択肢もあるかもしれないが、実家に私の居場所は無かった。  夫が不能になっても構わないと思っているのに、彼には嫌われたくないと思っていた。嫌われたくないのに、自分で自分を止めれない私が嫌になって、泣いた。  結局のところ、夫に浮気されても私は夫のことが好きなのだ。好きであるが故に、許せない──私は、いつからこんなにも夫を愛してしまっていたのだろうか。  自分の犯した罪に苛まされながらも、私は自分の気持ちにケリをつけることが出来なかった。私は夫を傷つける事でしか、自分を保てなかった。  心の弱い私は、夫婦生活に自分自身でピリオドを打つことや、夫の食事に薬を盛ることもやめられなかった。夫婦生活を円満に過ごすには、我慢しなければならない時があるとよく言われるが、こうまでして夫婦で居続ける必要があるのだろうかと思ってしまった。  彼を好きで居続けるために、薬を盛ることはやめられなかった。
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