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時計台の贈り物
年月を重ねた物には魂が宿るという。
昔、あるところに魂を宿した時計があったという。
大きな時計は高い塔の上にあり、街の人々に時間を知らせていた。
人々はそれを時計台と呼んだ。
彼か彼女か、本人にも分かっていないので、ここでは仮に『ソレ』と呼ぼう。
ソレは街をいつも見下ろしていた。
騒々しく走り回る労働者や、馬車に乗る婦人。最近では荷台の下に輪っかを取り付けて奇妙な騒音を立てる乗り物たちを、ただ眺めていた。
振り子が揺れ、歯車がかみ合う。
カチカチと音を鳴らし、ソレは動き続ける。
「老いぼれめ……時報の鐘も鳴りゃしねぇ」
お前こそ。ソレは思った。
男の髪が黒かった頃から、男はこの場所の手入れをしに来ていた。
男は独り言の多い男だった。
つまらねえだの、金が欲しいだの、頭が白くなった頃には、関節が痛いだの。
とにかく耳障りな、しゃがれた声でいつも何かをボヤいていた。
ソレは思った。人間というのは随分軋しんだ音を立てる生き物だなと。
男がここで何をしているのか分からなかったが、ハンドルを定期的にグルグル動かしていた。
それを見て、これをしないときっと自分は動かなくなるということだけは何となく分かった。
そういった事もあって、ソレは男に何となく借りがあるような気がしていた。
しばらくするとしゃがれた声の男に代わり、髪の白くない別の男が来るようになった。
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