ノックターンは静かな眠り

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 夜が深まり眠りにつく頃に隣の部屋から眠りを誘うようなノクターンが聞こえてくる。 拓也にとってはこの曲は子守唄のようだった。 この曲を聞き深い眠りに着いた。そして、この曲を流している住人が気になった。  こんなある日、自宅に帰ろうとしたときに激しい雨に見舞われて、雨宿りをしていたら  「この雨やみそうですか?」  「そうですね、もう少し降りそうですね」  「そうですか、早く家に帰りたいのですが、、、」  拓也は「家はここから近いんですか?」  「ええ、、ここから10分先にある上田マンションというところですが、、、」  拓也は「私もそこに住んでいます」  「同じ住人だったんですか?」  「私、302号室の萩野圭子といいます。隣の人なんですね」  「私は隣に住んでいる山内拓也といいます。よろしくね」  「そう言えば、よく、夜になると聞こえてくる曲は誰の作品ですか?」  「最近では私の日課になるくらい好きになりました」  「そうでしたか。実は私もこの曲が好きで、ボローデンの弦楽四重奏でノクターンと言う曲です」  「実家に居たときに、夜の11時になるとこの曲が聞こえてきて、好きになったんです」  そう話しているうちに、雨も小雨になり、自宅に向かって歩きだした。  10分もしてマンションに着き、圭子は「私の家でコーヒーでも飲みませんか?」  「もしよかったら、、」  「圭子は私の好きな曲を聞いてくれる人ですから歓迎しますよ」  「どうぞ、入ってください」そう言われ、302号室に招かれた。  部屋の構造は全く拓也の部屋と同じだったが、女性の部屋らしく華やかに飾られていた。  拓也が椅子に座って待っていると、圭子はマンデリンのコーヒー豆をミルに入れて、引き始めた。  コーヒーのいい香りが部屋の中に充満した。 そして、お湯を加え、2杯のコーヒーを作った。 圭子は「拓也さんミルクと砂糖入りますか?」 それを聞いて拓也は「私はストレートが好きなので要りません」と答えた。  「そうでしたか、私もコーヒーはストレートなんです」  コーヒーを拓也の前に出して「あの曲聞いてみますか?」そう聞かれ、拓也は「お願いします」と答えた。 圭子はCDを準備して曲を流した。 コーヒーを飲みながらノクターンを聞いていると、また違った雰囲気を味わうことができた。  いつもは最後まで聞く前に寝てしまったが、今日は初めて最後まで聞くことができた。 曲も終わり、コーヒーカップも空になったので拓也は立ち上がって「今日はありがとうございました。楽しい時間を過ごすことができました」そして、自分の部屋に戻った。  この事を気に拓也と圭子の距離が短くなり、お互いの部屋に行っては食事をしたり、お酒を飲んだりした。  雨季に入り、隣の部屋では珍しく女性の声が聞こえてきた。 しばらくして、圭子さんが私の部屋に来て「もし暇でしたら、一緒に飲みませんか?」と誘いが来た。  気になって、圭子さんの部屋に行くと、二人の女性がお酒を飲んでいた。 圭子の話によると「会社の同僚で由貴さんと美和さんで美和さんが失恋したので慰め会を開いてあげたんですが、美和さんが付き合っていた男性は同じ会社の同僚で吉永裕一と言う人なんです。それで、色々話を聞いているうちに、圭子さんの彼氏紹介してと言われ二人がここに来たんです」  「そうだったんですか」  拓也は二人に向かって「圭子さんと付き合っている山内拓也です。隣に住んでいます」 圭子さんはひとまず私のとなりに座ってもらい、缶ビールを拓也に渡した。  由貴さんは「圭子イケメンと付き合ってたの、、、いいなーー私も誰かいないかな」そう言いながらビールを飲んでいた。  美和さんはお酒が入るほど元カレの愚痴が出てきて圭子さんはそれをなだめていた。そんなこんなと0時を過ぎて飲みつかれたのか、二人はそのまま寝てしまい、圭子は二人を移動させて毛布を掛けた。  圭子は「拓也さんに何もできなくてごめんね」そういって謝った。  拓也は「この状態では寝るとこもないのでうちに来なさい」そう言われ、置き手紙で隣にいますと書いて、拓也さんの部屋に移動した。  圭子は寝る前にシャワーを借りて、頭からシャワーを浴びてバスタオルを巻いて出てきた。  拓也もシャワーを浴びて、冷たい水をもって圭子のもとに来た。  圭子はそれを一口飲んで拓也に抱きついた。 拓也が圭子のバスタオルを取ったら、圭子は「私、寂しかったの、早く拓也さんに抱かれたかったの」そう言われ、拓也は抱き締めて口づけをした。  そして、圭子の乳房をまさぐりながら乳首へと移動した。  指先で触れるほどに乳首は固くなってきた。  二人はそして一つになった。  拓也の体を激しく揺する分だけ圭子は大きな声をあげて、そして、硬直して逝った。  今までに感じたことのない快感を感じて、、、拓也もその後を追うように圭子の膣に精液を放出した。  その日、圭子は拓也の腕の中で眠りについた。  翌朝、圭子は拓也の部屋のシャワーを借りて目を覚まし、スエットを着て自分の部屋に行ったら、由貴さんが目を覚ましてテレビを見ていた。  美和さんは二日酔いで頭が痛く横になっていた。 由貴さんは「圭子さんは昨日は拓也さんのとこに居たんですか?」 「寝る場所がなかったので拓也さんがこっちで寝なさい」と言われ、隣に移動しました。 「由貴さんも美和さんもよかったら、シャワー浴びてスッキリしてきては、それまでに簡単な食事用意しますから、、」  そう言われ、由貴さんが最初にバスタオルを持って浴室に入った。  10分もしたら出てきたので、入れ替わりに美和さんが入った。  頭からシャワーを浴びてスッキリした気分で出てきた。  机の上にはトーストとコーヒーが置かれていて二人はそれを食べた。 美和さんはかしこまって「昨日は迷惑をかけてごめんなさい」と二人に謝った。  圭子さんは「気にしていませんから、、」とそういった。  二人は食事を終わらせて自宅に帰った。  圭子は簡単な朝食を作り、隣の拓也さんに届けた。  拓也さんは今さっき起きたのか。まだ眠そうで、そのままシャワーを浴びて、朝食にした。  こうやって、圭子と一緒に朝食を食べるようになってもう、何回目か、ふっと、大きな存在になってきていた。  拓也は「今度、うちの両親に会ってもらいたい」と話した。 圭子はそれを聞いて目頭を熱くした。  拓也は「梅雨明けの7月末ごろに時間とれますか?」そう言われ、圭子は予定表を見て空いていることを確認して、時間が取れることを拓也に話した。  「ちょうど1か月後ですね」そう、圭子は確認して話した。  拓也はそんな圭子が可愛くなり、抱きたくなった。抱き寄せて、圭子に口づけをした。  圭子は「朝から恥ずかしいです。夜にまた会いましょう」と言って、拓也から離れて、自分の部屋に帰った。  昨日の後片付けをして、二人の着たもの、そして、自分の洗濯物を洗って綺麗にした。  昼を過ぎた頃に美和から電話があり「元カレの吉永さんから電話があり、復縁したいと言われ、また元の鞘に戻ります。なんかお騒がせしました」と、電話があった。  「美和、今暇でしたらお騒がせの奢りをしたいので会えませんか?」と言われ「ちょうど暇だったので、そちらに自転車でいきます」と、連絡した。  「美和さんの家までは30分かかるので2時ぐらいまでに着きますから」と美和さんに連絡した。  これが美和が最後に聞いた圭子の声だった。  圭子は軽装で自転車をこぎ、美和の家の近くの大きな通りを信号を確認して渡りだしたら、そこに大きなトラックが暴走して圭子の自転車と激しくぶつかった。  圭子は5mほど飛ばされその上をトラックが乗って止まったので、内蔵破裂で即死してしまった。  美和はもう少しで来る圭子を待っていると近くでサイレンが鳴り、けたたましく回りがざわついているのを感じその近くまで行くと見覚えのある自転車と置かれた遺体を見て、顔が真っ青になった。  近くにいた警察の人に説明して自分の知り合いであることを話した。美和は至急、由貴にも連絡して、圭子のマンションの隣に住んでいる拓也さんに連絡して警察に向かった。  突然のことで二人は正常な判断ができなかった。 遺体を見てただ泣き崩れるばかりだった。  車を運転していた人は酒気帯び運転と信号無視でその場で逮捕された。 美和さんはあの時、圭子を呼ばなければこんなことが起きなかったと泣き崩れて後悔をした。  警察の調べで圭子の両親に連絡をして、変わり果てた娘を見て泣き崩れた。そして、2日後に荼毘に付され、両親の元に帰った。  拓也はあれから何も手につかずただ脱け殻のような日々を過ごしていた。  ある時CD店の前を通り過ぎた時にふっと、圭子と聞いた、ボローデンの弦楽四重奏のノクターンを思い出してそのCDを買ってきて家で聞いた。  拓也はそれを聞きながら涙を流してその時一緒に聞いた圭子を思い出した。思い出は走馬灯のように流れていった。  拓也は軽い眠りに入り目の前に圭子が現れた。  「拓也さん一緒に馴れなくてごめんね」そういって涙を流していた。  ふっと、目を覚ましたら、ノクターンの終わりの音楽がなっていた。  拓也にはこの曲を聞くといつも圭子が見つめているようだった。
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