都内泉質ナンバーワンの温泉に行った日のこと

11/19
前へ
/19ページ
次へ
 そしてまた天然温泉に入る。万全を期して手すりにつかまりながら。  江戸っ子気質の私は少しでも熱い湯を求め、吐出口のすぐ近くに進み歩く。  すると小学校に入るか入らないかの年頃の先客が、笑顔で「こんにちはー!」と挨拶してくれたので、「はい、こんにちは」と笑顔で返した。  と、その少女の母親らしき女性が「『こんばんは』でしょ」と少女にツッコミを入れたので、素直な彼女はすぐに「こんばんはー!」と訂正した。  私も「はい、こんばんは」と挨拶をし直した。  そして彼女は母親と共に湯から上がって行った。  温泉に浸かっていると、いろんな女性が目に入る。  東南アジア人らしき肌の浅黒い女性や子連れのロシア人らしき白人女性もいる。  母親に手を引かれている未就学児らしき男児もいる。  いろんな体型の人がいる。  幸せだったりいろんな事情を抱えていたり、社会的地位が高かったり低かったりするのだろうが、全裸になってしまえばそんなことは関係ない。  みんな同じ人間なのだ。  老いも若きも、貧富の差も関係ない。  みんな身体をきれいにするために、温まるために、あるいは効能を求めてここに(つど)っているのだ。  高くはない入場料を払って。  最寄り駅からは距離があるこの施設まで、無料送迎バスや自家用車やバイクや自転車で、あるいは歩いてやって来ているのだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加