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ガタガタという音を軋ませながら、坂道を登っていく僕の体はもはや地面と直角になっていた。やがて、ガクンという一際大きな衝撃のあと、僕を乗せたジェットコースターは急な下り坂を高速で走り始めた。目に刺さるような冬の日差しと空気を切り裂くような衝撃に時折り目を細める。ずっと楽しみにしていた遊園地。お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お兄ちゃんと一緒に一日中楽しんだ遊園地。それもこのジェットコースターが止まったら、あとは家に帰ることになっている。だから、怖くて目を瞑るなんてもったいない。大きく右に左に体を振られたり、急ブレーキなどの衝撃が体に響いてくる。怖いけれど、楽しい。この時間が永遠に続けばいいのに。
「……家に着いたよ。起きて」
遠くから、誰かに声をかけられている気がする。遊園地ではしゃぎすぎてしまったからか、帰りは車に乗った瞬間に寝てしまった。
「ほら、起きて。家に着いたからさ」
たぶんお兄ちゃんだろう。そっか、もう家に着いたんだ。僕はまだ夢から覚め切らないようにフワフワした感じで家の中に入ろうとしたときに、
「家族にニセモノがいる」
そうハッキリとお兄ちゃんの言葉が聞こえた。
朝になり、居間に行くとお父さんは仕事に行く準備をしていた。そんないつもの様子を見ながら、部屋の隅に立っているとお兄ちゃんが近くに寄ってきた。
「家族にニセモノがいる」
昨日の夜も聞いたような気がするその言葉。お兄ちゃんの横顔を見ると、すごく真面目な表情をしていた。
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