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「ニセモノって?」
「ニセモノはニセモノだよ。違和感を見つけ出して、ニセモノを早く見つけないと」
「違和感ってなに?」
「違和感は、そうだな。いつもと違うことだよ」
「いつもと違うこと。それで、その違和感を見つけないとどうなるの」
「ニセモノにとって悲しいことが待ってる」
家族にニセモノがいる。そのニセモノを見つけるために違和感を探す。早く見つけないと、ニセモノが悲しいことになる。僕たちじゃなくて、ニセモノが悲しいことになる。意味がわからない。お兄ちゃんにもっと説明をしてもらおうとしたけれど、もう僕の隣にお兄ちゃんはいなかった。仕方なく、居間にいる家族の様子を見てみることにした。
お父さんがコーヒーを飲んでいる。お父さんは毎朝、仕事に出かける前に必ずコーヒーを一杯飲んでいく。だから、いつもと変わらない光景なんだけれど、なにか引っ掛かる。テレビを見ながら、熱いコーヒーに息をかけて冷ましながら飲むのもいつも通り。お父さんから目線をテーブルに移したときに、いつもはないはずのものがあることに気がついた。コーヒーフレッシュが開けられた状態で置いてあった。お父さんは、コーヒーをブラックで飲むから、コーヒーフレッシュは使わないはずだ。今はお父さん以外に誰もコーヒーを飲んでいないので、あのコーヒーフレッシュはお父さんが使ったものなのだろう。たまたまかもしれないけれど、いつもと違うお父さんの行動、これが違和感なのだろうか。
「もー、なんで起こしてくれなかったのよ」
「何度も起こしたわよ〜。それでも起きなかったのはお姉ちゃんでしょ。早く朝ごはん食べちゃいなさい」
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