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お兄ちゃんのお茶はお兄ちゃんのテーブルに置いて、お母さんはいつもの席に座ってお茶を飲みながらスマホをいじりはじめた。機械は苦手だからと言っていたお母さんが、いつの間にガラケーからスマホに機種変更をしたのだろう。確かに以前から、「そろそろスマホの時代よね」とも言っていたから最近変えたのかもしれない。すごい速さで指を動かしてスマホを操作するお母さんをしばらく見つめていた。
「違和感は見つかった?」
いつの間にか隣にお兄ちゃんが立っていた。ほのかにお茶の匂いがするから、僕がお母さんのことを考えているうちにお茶を飲んでいたのだろう。
「なんか、みんなちょっとずつ、いつもと違うように感じる」
「そうか。でもニセモノは一人だけなんだ」
「一人だけ?」
「そう一人だけ。今、そのことに気がついているのは僕だけだ。だから早く、お前にも気がついてほしい」
「なんで僕なの?」
「言っただろう。このままだとニセモノが悲しい思いをするって。僕は例えニセモノだろうと悲しい思いはさせたくないんだ。だから、お前の協力が必要なんだよ」
お兄ちゃんは昔から優しい。いつもゲームばかりしているけれだ、なにかあれば僕の味方をしてくれて、それでも僕が間違ったときはちゃんと叱ってくれた。頼りになるお兄ちゃん、なんとなく前よりも大人になった気がする。
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