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「影の檻 ~愛と真実への逃避行~」
第1章: 「二重生活の影」
38歳の商社マン、佐藤郁夫は、長年勤めた会社からのリストラ通告に茫然自失としていた。15年以上も忠実に働いてきたにもかかわらず、経営難を理由に冷たく切り捨てられた現実を受け入れることができず、毎日が灰色に染まっていた。しかし、少しだけ納得する面もあった。それは漠然とした予感、不安を嗅ぎ取っていたからだった。
「あの感覚、こういうことを示していたのかな」
この郁夫の『予感』というか『嗅覚』を身に着けたのはキッカケがあった。
郁夫が「嗅覚」と呼ぶ直感は、十数年前、深夜のオフィスでの出来事から始まった。
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