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湖の中に気を取られているうちに、いつの間にか、大きな岩の前に着いていた。船が自然と止まる。湖には、いつもと変わらない自分の姿が映っていた。
(今のは何だったんだろう。湖の主が子供?僕に似ているようにも見えたけど。)
不思議なほどの静寂が満ちていた。
空気も澄んでいるように感じる。
(靄もないのに、なぜこの岩が見えなかったのだろう)
パタは、自分で考えても答えが出ないことを、知っている人が教えてくれなければわからないことを知っていた。
(ん?なんだ?僕は誰から教えてもらおうというんだろう。わからないことを知っている?なんなんだ。そういえば。さっきから変だ。)
パタは船が進むにつれ、自分の頭に、心に、自分のものではないような考えが浮かぶこと、にも関わらず、それは「知っている」という感覚と結びついていることに気づいた。
『祝詞を・・・』
頭の中に、声が聞こえる、言葉が浮かぶ、不思議な感覚。
(まただ。不思議だけど、懐かしい気もする・・・。)
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