マッチョの好物

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マッチョの好物

 県内にある、ほどほどに自然が豊かな町。  ここに某私立大学のキャンパスがある。  この大学は、お世辞にも偏差値が高いとはいえないのだが、体育会系の部活やサークル等が活発で、強豪が多く、スポーツの名門として全国的に知られている。  そんな大学に通う学生たちが、汗をたっぷり流した後に、こぞって通う店がある。  キャンパスから道路を隔てた先にある牛丼チェーン店である。  良心的な価格設定で、学生のふところにやさしい店なのだが、どうも、それだけではないようである。 「へい、おまち!」  客である学生にどんぶりを差し出す店員。 「いただきます!」  勢いよくそう言うや否や、学生は箸を手にし、がつがつとどんぶりの中身を口の中に()き込んでいく。  そんな光景が店内のあちこちで見られる中、店の扉が勢いよく開いた。 「お、()いてる、空いてる!」 「なんとか間に合ったな」  そこには二人の若い男性がいた。  一人は身長約二メートルの長身。一見、スリムに見えるが、筋肉がしっかり付いており、体重は百キログラムを超えているものと思われる。  もう一人は隣の男と一緒にいると背が低く見えるが、それでも身長百八十センチメートルはある。肩幅が広く、隣の男と比べると太って見えるが、その体つきは、けっしてだらしないものではない。やはり、筋肉がしっかり付いており、彼の体重もまた、百キログラムを超えているものと思われる。  あつらえ向きに、カウンター席が二人分空いており、しかも隣り合っているので、二人はそこに向かう。  二人はカウンター席に辿(たど)り着くと、どかっと腰かけた。  そして――
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