マッチョの好物

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「ところで……」  肩幅の広い男が、長身の男に問いかける。 「何だ?」 「なんで、チー牛ってさ、暗そうな、もやしみてえな奴のことをいうようになったんだ?」 「さあな。元はネットらしいが、よくわからん」 「プロテイン、ガッツリ取れるし、オレたちのためにあるようなもんだと思ってたんだが……」 「うーむ、ひ弱な奴だからこそ、強い奴に憧れてたんじゃねえかな。きっと、チーズ牛丼食って、筋肉付けたかったんだよ! 筋肉を!」 「そっか。もやし男が筋肉マンに憧れてたんだな! そういえば、なんかそんな名前の漫画があったな」 「あった、あった! 作者の名前、思い出せんが」 「まあ、それはともかく、チー牛がバルクアップにうってつけなのは確かだ。筋トレをサボらなきゃ、きっと強くなれる!」 「そうだな」  眼鏡をかけた地味で華奢(きゃしゃ)()えない男が、チーズ牛丼を食べて、筋トレに励み、筋骨隆々になり、サンドバッグを殴り飛ばしたり、リング上で汗を流しながら、対戦相手と激しい技の応酬を繰り広げたりしている。  今、彼らの頭の中には、そんな光景が浮かんでいる。
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